2012年10月18日木曜日

Gravity ジョン・メイヤー (John Mayer)

歌詞に登場する「重力(Gravity)」という言葉は一体なにを意味しているのでしょうか?「現実」であるとする説,「年を取る事」であるとする説と様々ですが,ここでは「重力=より多くのものを求める欲望」とする解釈で訳文を作りました。欲望の対象は,愛情かもしれませんし,金銭かもしれませんし。名声や権力である場合もあります。ただ対象がそのいずれであるにしろ,曲のメッセージは「足るを知る」ということになります。
この「足るを知る」,アメリカ,とりわけ現代のアメリカが富と名声を人生の究極の目的とするような社会であることを考えれば,多少毛色の変わったメッセージと言えるかもしれません。
What does the word 'Gravity' in the lyrics represent?  Some say it's the reality and others say it's aging.  Here I take another interpretation, i.e. the word 'Gravity' represent craving for more.  It could be craving for more love, money, fame or power.  In any case, the message the song carries is the same :  "Contentment is great riches."
Considering the US being a society where wealth and/or recognition seems to be the ultimate goal in life, such a message sounds a bit offbeat or unconventional especially in these days.
Gravity  (John Mayer)
Gravity is working against me
And gravity wants to bring me down

Oh I'll never know what makes this man
With all the love that his heart can stand
Dream of ways to throw it all away

Oh Gravity is working against me
And gravity wants to bring me down

Oh twice as much ain't twice as good
And can't sustain like a one half could
It's wanting more
That's gonna send me to my knees

Oh gravity, stay the hell away from me
And gravity has taken better men than me (now how can that be?)

Just keep me where the light is
Just keep me where the light is
Just keep me where the light is
C'mon keep me where the light is
C'mon keep me where the light is
Oh... where the light is! [repeat]

欲望は重力と同じように,人間を抑えつけてがんじがらめにしてしまう
かなうのが当たり前で,逆にかなわないと無力感に苛まれる

そうなんだ どうしてこんな風に思うのか自分でもわからない
大切にしてくれる人がそこにいるのに
その有難みに気付かぬまま,それが束縛と考えて
そこから逃げたしたいなんて考えてるんだから

欲望は重力と同じように,人間を抑えつけてがんじがらめにしてしまう
かなうのが当たり前で,逆にかなわないと無力感に苛まれる

そういうものは,多けりゃいいってもんじゃない
余るより足りない方がいいこともある
身の程を知らずに求めすぎると
結局,酷い目にあって傷つくことになる

だからそんな目には遭いたくない 今あるもので満足したい
だって立派な人間でも,欲望に負けることはあるんだから(信じられないよ)

欲望に振り回されて傷つくなんてイヤなんだ
だからそんなものに引きずられずに
本当に必要なものだけで満足したい
暴走しそうな欲望を抑えて
満ち足りた気持ちで生きていきたい
欲望から自由になりたいんだよ

(補足)

最後の連で「Just keep me where the light is」と歌っていますが,この部分,where the light isの解釈としては:

①光が当たっている場所(=真っ当な場所)という意味
②重力の影響を受けない場所という意味

の2つが考えられますが,訳文は主に②の意味で作っております。

さて,この②に関して「おいおい,光だって重力で曲がるだろ。重力レンズはどうなるんだよ」とお考えの皆様もおいでになるかと存じますがご安心ください。gravityは地球の重力を表す単語で,それ以外の重力にはgravitationという単語がございます。したがって②の意味でもここでは問題ありません。

(余談)

正直なところ,私の中でJohn Mayerと言えば,もれなくTaylor Swiftがついてくるのですが,彼がそれだけの人になっていないのは,一にも二にも彼の作る曲が素晴らしいからです。とりわけ,6月1日に投稿したWalt Grace's Submarine Test, January 1967 http://oyogetaiyakukun.blogspot.jp/2012/06/walt-graces-submarine-test-january-1967.html を最初に聴いた時は,感動の余り泣けてきました。


3 件のコメント:

  1. John Mayerですね。新しい音楽にほとんど手をださなかった「失われた10年」があるのですが、その間に3枚だけアルバムを買いました。そのうちの1枚が彼のRoom for Squaresでした。(あとはNora JonesのDon't Know Whyとスピッツのインディゴ地平線。この3枚、その頃よっぽど売れてたんでしょうか。)Room for Squaresは、なかなか良いアルバムで、何度も聴きました。余談でも書いておられますが、良い曲を作る人だと思います。でも、Taylor Swiftとつき合っていたり、その後、恨まれたりしていたとは・・・。その彼が今回のようなテーマの曲を書いているというのは、なんとなく意外な気がしました。

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    1. コメントありがとうございます。地球の引力(gravity)の他に,我々の周囲には様々なgravityが存在しており,その最大のものが他者との関係性であると個人的には思っております。この関係性というgravityは,+に働けば「絆」「繋がり」ですが,-に働くと「束縛」「しがらみ」になります。
      無論,物理的な重力同様,それなしには人間は生きていけないとは思いますが,それだけにそこから逃れることが非常に難しい。そして,その困難さを題材にした曲がDefying Gravityであると私は思っています。
      余談で言及した彼のWalt Grace Submarine Test January 1967が「日常のしがらみからの脱出」であり,Slow Dancing In A Burning Roomが「他者とのつながりからの脱出」あることを考えれば,gravityからの離脱というのは案外彼の音楽の核となるテーマなのかもしれません。

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  2. 訂正させてください。×Nora JonesのDon't Know Why → ○Norah JonesのCome Away with Me

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