2013年1月26日土曜日

Every Breath You Take スティング (Sting)


Every Breath You Take  (Sting) / tetz

"The absolute masterpiece" (完璧な最高傑作)と称されるとおり、疑う余地も無くゴードン・サムナー氏が産んだ20世紀最高の芸術作品の一つであり、正に傑作中の傑作と言える曲だと思います。 今後何百年も歌い継がれていくのではないでしょうか。

この曲はThe Policeの全セールスの1/3を占め、リリースから30年経った今でも、この一曲だけで、毎日約20万円の印税がStingに払われてるそうです。

ご指摘のように、確かに「最も誤解されてる迷曲のひとつ」でもあります。
一般的には、その優しいメロディゆえに、愛する相手に捧げる歌として扱われていて、”Runaway Bride”という結婚をテーマにした映画や、"The Replacements"など、いくつかの映画やドラマの恋愛シーンで使われてます。
中でも特に有名なのが、あの「アリーmyラブ」シーズン4の名シーンです。 ボーイフレンドのラリーがアリーの誕生日に現れなくて、アリーが席を立とうとしたその時、ラリーがサプライズで突如"Every Breath You Take"を歌いながら現れ、アリーはビックリ。 でももっと凄いサプライズが用意されていた。というあの感動的なシーン
 
このように甘いラブソングですが。。。 仰るとおり、実はこの曲、「ストーカー・ソング」です。 邦題も「見つめていたい」 と、抱擁するような愛を感じるタイトルになってますが、この曲が産まれた背景はSting自身の離婚が絡んでいて、"I'll be watching you"とは、「目を光らせてるからな」という意味であり、どっちかっつーと「見つめて痛い」なんですよね。(笑) これに関しては、きっと後世に「スティンゴロジー」という学問が登場し、曲の解釈を巡って熱い議論が交わされるだろうと想像しています。 

で、実は、その本来の意味の方で、この曲が歌われたことがあります。 2005年にロンドンで開催された「Live 8」というチャリティイベントにおいて、Sting自身の替え歌で、各国の政府に対して「我々は行政に眼を光らせてるから、しっかりやれよ」と歌われてます。
また、この曲はStingが、ある夜、就寝中に思いつき、飛び起きてピアノに向かい、20分で書かれた曲と、本人は語っています。 名曲は直ぐにできるとも言われますが、実に巧みな技巧が使われてます。 そのことが、不自然さを感じるほどキッチリとしたライミングから読み取れます。 一般的に、この歌詞のような "Rhyming辞書" を使ったような韻の踏み方は、”Perfect Rhyme”(完全韻)と言われ、Cliches(クリーシェィ:ありがちな陳腐な表現)同様、敬遠されます。 

しかし、そこは流石Sting様。 歌詞中に沢山出てくるEveryに続く単語を覚えやすくするために、あえて単純なライムを反復音デバイスとして用いて、「エコー効果」を強調しているのです。一見安っぽいライムに見えますが、自分で歌ってみれば判ります。完全な反復があるから記憶に残るのです。 音楽的には、Sting自身も「メジャーコードの後に関係マイナーが続く曲はオリジナリティがない」と語ってるように、超定番の I-vim-IV-V 進行(いわゆる50'sと言われるコード進行)であり、一聴で あの"Stand By Me"と同じだなと気付くと思います。 
その平凡なコード進行と、単純なライミングの、「なんの変哲も無い普通の曲」を、変哲もある歴史的名曲へと豹変させたのが、あの特徴的なギターアルペジオ(ギターリフ)であり、Andy Summers(The Policeのギタリスト)による「大発明」とまで言われてます。 あのギターサウンドはサンプリングされたり、
 パクられたり (笑)してますが、 
Andyには作曲者としての印税は一銭も支払われてません。 ソングライターには今だに毎日20万円も支払われてるのに、なんか釈然としませんね。

 最後に、"Every Breath You Take" のPVに関するとリビアをひとつ。 この曲のビデオの中で、「窓拭きのおじさん」がさりげなく登場しますが、あれは、「この曲が、Roxanneから始まったポリス物語の集大成ですよ」というStingの個人的なメッセージが篭められてます。 そのヒントは自叙伝映画「Bring On The Night (ブルータートルの夢)」の中で語られてます。

(ヴィデオは大変長尺なのでお時間のない方は早送りなさることをお勧めします。問題の箇所は1:16:30あたりから始まります。)
(追記)

この映画には字幕がついていないことに後で気づきました。

問題の「窓ふきのおじさん」の箇所ですが,私の甚だ心もとないリスニングによると,初めてシングルがチャートに入った頃,イングランド北部でコンサートがあり,そこのホテルのベッドに寝ていた時,窓ふきのおじさんが自分の作ったRoxanneを口笛で吹いていて,思わず涙したと彼(Sting)は語っています(多分)/vestige

2 件のコメント:

  1. お二人のおかげで映画Bring on the Nightを見るきっかけになりました、ありがとうございます。本のBroken Musicも読んでみて良かったと思ったのですが、どれも知るほどに面白くなりますね。vestigeさんの歌詞和訳も興味深くて面白いです。

    返信削除
    返信
    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。私もishii様と同様,この曲がきっかけとなりBring On The Nightを見る機会に恵まれました。
      さて,別館(twitter)でも余談を展開しております。まだおいでになっていなければ,お時間があればそちらへも。お待ちしております。

      削除